ゲオルクの日記

多分三日くらいで潰れる

近況報告

注:この文章には『響け!ユーフォニアム』シリーズ、『呪術廻戦』、『賭ケグルイ』のネタバレがあったりなかったりします。

 

 よー、そこの若えの 俺の近況を聞いてくれ

 

 

響け!ユーフォニアム 見ました

 

 最近『響け!ユーフォニアム』のアニメを見ました。最近って言っても別に最近でもないし全然去年の話なんですけど。面白かったので原作小説も読みました。アニメだと2年生編が結構駆け足だったんだなぁという印象を受けました。加部先輩と小日向さんのエピソードとか、アニメだとまるまるカットされてしまったのは勿体ない気がします。『リズと青い鳥』で描かれた希美とみぞれのストーリーも、小説で読むとまた違った印象がありました。

 3年生編では久美子が部長になって、より主体的に物語に関わっていく点が面白いと思います。最終楽章からは久美子の物語上の立ち位置が明確に変化しているように見えます。それまでは視点人物として、ある種傍観者的に物語に関わっていた久美子が、今度は主観的に、自分自身の意思を明確に持って吹奏楽部を纏めていく。

 久美子は流されやすいタイプだ、ということが、『ユーフォ』の作中では繰り返し強調されてきました。それと同時に、人に頼られやすく、困っている人間を放っておけないタイプでもある。もちろんそれは視点人物としての物語上の要請でもあります。

 しかし部長になった久美子は、もはや「流されやすい」などという人間ではありません。本質が変わっているかどうかはともかくとして、少なくとも主体性のある人間として振る舞おうとしている。振る舞わねばならない。その状況が久美子のキャラクター性を変えていくのです。

 久美子は部長として、部員を束ね、全国大会金賞を目指すことになります。その使命のため、久美子は無私に徹し、人間関係の調整に苦心し続けます。部員の人心を掌握するためなら時として打算的に接することも厭わない。2年生までの久美子だったら、およそ考えられなかった言行です。部長としての立場と、一人のユーフォニアム奏者としての立場の間で板挟みになり、ついには無二の友人だった麗奈と衝突さえしてしまう。なし崩し的に部長という権力の椅子に座ったことによって久美子の立場は彼女の意思とは無関係に流転していくのです。

 つまり『鎌倉殿の13人』の北条義時と同じ状況です。麗奈は三浦義村みたいなもんです。ちょっと違うかも。

 ちなみに筆者が好きなキャラは川島緑輝です。メインキャラの中では一歩引いた位置にいると見せかけて、求くんとの絡みが発生することによって一気に当事者として物語に巻き込まれていく部分がある。そういう部分が面白いと思います。あと単純に楽器上手いキャラに憧れるというのもあります。

 ところで武田綾乃といえば新潮文庫nexの『君と漕ぐ』シリーズが好きなのでこっちもアニメ化しねえかなあと常々思っています。カヌーの動きってアニメ映えすると思うんですよね。なんならNHKで一回アニメ化されてる(「アニ×パラ」というパラリンピックをフィーチャーしたEテレ5分枠アニメにキャラが使用されたことがある)ので本格的なアニメ化に向けた導線はあると思います。まだ読んでない人は要チェックだぜ。5巻完結なので読みやすいです。

 

 

・呪術廻戦 読んでます

 

 単行本派なのでとりあえず25巻まで読みました。最新刊も面白かったです。やっぱり五条が出てくると盛り上がるので良いなと思いました。ただこれアニメ化する時どうするんでしょうね。渋谷事変で漏瑚対宿儺とか宿儺対摩虎羅とか散々派手にやっちゃったから、どうしても五条対宿儺はそれを超えなきゃいけないハードルみたいなのが出てきてしまう感じがする。でも視覚的にアレを超える派手さの映像って難しいような気もする。その辺も含めて楽しみです。

 せっかくなので未アニメ化部分の話をするんですが、死滅回游は乙骨が出てくるので良いです。映画の『0』が相当良かったのと、個人的に目つきの悪いキャラが好きなのが相まって、乙骨が出てくると否が応にも盛り上がってしまう部分があります。

 新キャラだと秤先輩が好きです。領域展開が面白いので。

 あと釘崎って本当に復活しないんですか???

 

賭ケグルイ観ました

 

 アニメを観ました。面白かったです。生徒会長の声が良かった。

 ギャンブルの中だと2枚インディアンポーカーが一番好きでした。夢子たちが完全に負けたと視聴者にも思わせた状況からの逆転劇が気持ち良いので。イカサマトリックも単純かつロジカルで面白かったです。

 キャラも色々出てきて良かったんですがやっぱり主人公の鈴井くんは魅力があって良かったと思います。夢子たちに比べれば当然ギャンブルは弱いんですが、弱いなりに必死に頭を回してギャンブルに食らいついていく姿が健気で良い。1期最終話とかカッコよかったよね。

 筆者は世代的にギャンブル漫画といえば『ライアーゲーム』が最推しなのですが、ライアーゲームの主人公のカンザキナオちゃんもあまりギャンブルが強いキャラではありません。むしろ馬鹿正直で騙されやすい。けれど戦いの中で成長していって、終盤では「やるときはやる」系のキャラクターに変貌していきます。鈴井くんもそういう部分があるから魅力的に感じるのかもしれません(ギャンブルに対するマインドとか向き合い方は全然違う気もしますけど)。

 

・ぬるめた読んでます

 

 城下町のダンデライオン(筆者が一番好きなきらら漫画)がFUZに移籍してからきらら本誌を買う習慣もなくなり、それに伴って単行本もあまり買わない生活が続いていました。ぼっち・ざ・ろっくは買ったけどな。アンソロコミックも買ったけどな。

 でも『ぬるめた』はニコニコ静画でも連載していたのでたまに読んでいました。それで先日ふと単行本を揃えようと思い立ったのですが、1巻がなかなか売っていない。どこにも売ってない。BOOKOFFにもない。2巻と3巻は手に入るのに。結局通販で取り寄せて事なきを得ました。

 最近のきららレーベルでアニメ化されている作品の潮流といえば先述の『ぼっち・ざ・ろっく!』とか『星屑テレパス』とかストーリー性の強い作品が人気なのかなと思います。ぬるめたはむしろその真逆で、単発日常回の連続によって構成されており、女子高生の他愛のないやり取りをひたすら続ける作風です。『ゆゆ式』に近いような、古き良き時代の日常系漫画の香りを感じます。そういうノスタルジー(?)を我々(誰?)は追い求めているのかもしれません。

 あと主人公はアンドロイドという設定なのでアンドロイドフェチの皆さんにもおすすめです。

 

 

 

FGO 再開

 

 筆者が最も熱心にFGOをやっていたのは高校の頃で、あの頃はちょうど第一部が完結し、ネットでも大いに盛り上がっている頃でした。筆者もFGOをきっかけに型月にハマり、両儀式の影響を受け、ボルヴィックの水やハーゲンダッツのストロベリーを食べまくる生活を送っていました。なんなら今もハーゲンダッツのストロベリーは食べてます。

 第二部が始まってからもしばらくはストーリーを追っていたのですが、ちょっと飽きて放置したりして、その間にメインストーリーも読んでいない分が溜まってしまって、そうなると余計に手を出すのが億劫になって、たまに起動して石をもらってガチャを回すアプリと化していました。その無欲さが良かったのか、言峰神父を10連で引いたりしていました。

 しかし先日ようやく重い腰を上げてストーリーを再開したのです。キャラ性能がインフレしてたら嫌だなあとか思っていましたが、今のところ主力であるアーチャーギルガメッシュ(レベル100、宝具5、スキルマ、フォウマ)で戦えています。なんかしばらく見ないうちに知らん強化項目が増えてたけど。

 というわけで今はアヴァロン・ル・フェを進めています。なんかTwitterでみんなオベロンの話してたからオベロンの存在だけは知ってたんですよね。あとアルトリアがかわいいね。

 問題は前章との間が開きすぎて筆者の方から記憶が完全に抜け落ちていることです。あと平安京も飛ばしてるんですよね。キャスターリンボってどうなったんですか? あとカドックって今どうなってるんだっけ?

 

 近況報告はこんなところです。

 ちなみに筆者が今いちばん楽しみなのは『成瀬は天下を取りにいく』の続編が刊行されることです。

 みなさんが楽しみなことも教えてね。

 

2023年下半期 良かったもの

〈映画〉

・リバー、流れないでよ

・マスターオブスキル For the GLORY

君たちはどう生きるか

・ヴァチカンのエクソシスト

ミッション:インポッシブル/デッド・レコニング PART ONE

・王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン

爆竜戦隊アバレンジャー 20th 許されざるアバレ

・赤と白とロイヤルブルー

・アリスとテレスのまぼろし工場

・ミステリと言う勿れ

・キリエのうた

・ザ・クリエイター/創造者

シン・ゴジラ:オルソ

ゴジラ −1.0
・屋根裏のラジャー

仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー⭐︎ガッチャ大作戦

 

〈小説・漫画〉

・シャーロック+アカデミー

・ノウイットオール あなただけが知っている

・アンデッドガール・マーダーファルス

アリアドネの声

・可燃物

・夏の約束、水の聲

・ウェルテルタウンでやすらかに

・鏡の国

・午後のチャイムが鳴るまでは

・誰が勇者を殺したか

・不死探偵・冷堂紅葉

・幽世の薬剤師

・厳冬之棺

・涜神館殺人事件

・ときときチャンネル 宇宙飲んでみた

・スイリ先生、はしたないっ!

・地雷グリコ

・新装版 少年名探偵 虹北恭助の冒険

ソードアートオンライン オルタナティブ ミステリ・ラビリンス 迷宮館の殺人

 

〈ドラマ・アニメ〉

・季節のない街

仮面ライダーギーツ

・ワンピース(Netflix実写版)

・GAMERA -Rebirth-

火の鳥 エデンの宙

・トリリオンゲーム

・VIVANT

ハヤブサ消防団

・SYNDUALITY Noir

・ノッキンオン・ロックドドア

PLUTO

幽☆遊☆白書Netflix実写版)

・アンデッド・アンラック

アイドルマスター ミリオンライブ!

・16bitセンセーション ANOTHER LAYER

・鴨野橋ロンの禁断推理

・星屑テレパス

・デッドマウント・デスプレイ

・呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変

 

〈ゲーム〉

・超探偵事件簿 レインコード

Fate/Samurai Remnant

スーパーマリオブラザーズ ワンダー

自分を曲げないということ

 これは僕が先日本屋の児童書コーナーを物色していた時のことです。

 ちなみに成人男性が一人で児童書コーナーをうろついていると怪しく見えるので、「親戚の子にプレゼントする本を探しています」という顔をするのがコツです。

 同じメソッドはヨドバシのソフビコーナーとかでも使えます。試してみてくださいね。

 

 それはそれとして、一人で児童書コーナーを眺めていたところ、一冊の本を見つけました。

『数は無限の名探偵』という表題のアンソロジー本でした。昨年末に創刊された〈ナゾノベル〉なるシリーズの第一弾らしいです。

 

 

 アンソロジーなので各話は短いです。主人公は大抵小学生か中学生で、身の回りで起こった事件を数学に絡めて解決するというのが大まかなストーリーです。

 探偵ものなので、それぞれの話に探偵役が出てきます。大抵は主人公の同級生とか、同年代の子供で、数字に強い子供が探偵役を担うパターンが多いです。

 しかし1編だけ毛色の違う話があります。井上真偽「引きこもり姉ちゃんのアルゴリズム推理」です。タイトルから分かる通り引きこもりの姉が探偵役です。作中の描写によれば高校生くらいの年齢となっています。部屋はゴミ屋敷になっており、滅多に風呂に入らず、対人スキルに難を抱える、という設定です。風呂に入っていないから臭い、という描写が繰り返し出てきます。極め付けは、ビデオ通話で話す時には専用のアバターを使う(Vtuber的な)という設定まであります。

 こんなことしていいのか???

 最近の児童書ってこうなのか???

 僕が子供の頃読んでた児童書ってこんな風呂に入ってない引きこもりの姉キャラとか出てこなかった気がするんですよね。ていうか今だって無いだろ。だって他の話にこんなキャラ出てこないもん。これを読んだキッズの性的嗜好が狂ったら井上真偽と朝日出版は責任を取れるのか?

 多分対象年齢的に小学校の中〜高学年くらいで読む本だと思うんですけど。この時期に形成された性癖っていまだに*1精神の基礎みたいなところに染み付いてるからね。(それとも僕だけでしょうか。皆さんはいかがですか?)

 

 しかし僕はこれを読んで大切なことを学びました。それは「自分を曲げない」ことです。

 井上真偽のデビュー作『恋と禁忌の述語論理』では、ヒロインは主人公の叔母でした。

 叔母!?

 そんなことある?

 いや確かに最近のスパイダーマンの映画だとメイおばさんもだいぶ若くなってたけどさ。

 叔母だぜ???

 しかしながら、そこが重要なのです。

 いかに子供に向けて書いた本だからと言って、自分を曲げる必要はない。むしろこの「引きこもり姉ちゃんのアルゴリズム推理」からは、これを読んだ小学生の精神を自分の性癖で染め上げてやろうという邪悪な魂胆さえ垣間見えます。そしてテキストの裏に隠されているのは「姉いいよね……」「年上の女性いいよね……」というメッセージなのです。それはデビュー作から一貫しているとも言えます。

 初志貫徹。言うは易し、でしょう。だが、果たして純真無垢な子供を目の前にしたとき、本当に「自分」を貫くことは出来るのか。

 この短編は、そんなことを問いかけてきているようにも思えました。

 

 ところでここまで読んだ人は大体察しているかもしれませんが僕は一人っ子です。

 今から姉できねえかな。

 できれば26〜9歳くらいがいいな。

 何とかなりませんか?

 ならねえか。

 全員くたばれ。

 じゃあな。 

*1:筆者は現在23歳です。

2023年上半期 良かったもの

観たり買ったりして良かったやつをメモします。

 

【映画とか】

・『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

・『シン・仮面ライダー

・『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』

・『ダンジョンズ&ドラゴンズアウトローたちの誇り』

・『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』

・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol3』

・『劇場版 推しが武道館行ってくれたら死ぬ』

・『岸辺露伴ルーヴルへ行く』

・『怪物』

 

【小説・漫画】

・『幽世の薬剤師3』

・『君と漕ぐ5 ながとろ高校カヌー部の未来』

・『星くずの殺人』

・『エレナの炬火』

・『暗号学園のいろは』

・『虚構推理短編集 岩永琴子の密室』

・『ニチアサ以外はやってます!』

・『成瀬は天下を取りに行く』

・『化石少女と七つの冒険』

・『世界の終わりのためのミステリ』

 

【ドラマ・アニメ】

・「ウルトラマンデッカー」

・「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」

・「ガンニバル」

・「大病院占拠」

・「とんでもスキルで異世界放浪メシ」

・「舞いあがれ!」

・「ブラッシュアップライフ」

・「クイーンメーカー」

・「だが、情熱はある」

・「ペンディングトレイン ─8時23分、明日 君と」

・「スキップとローファー」

 

【ゲーム】

・「ファミレスを享受せよ」

・「ゼノブレイド3 新たなる未来」

・「ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム」

 

『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』ネタバレ有り感想

まさか令和になってから平成ライダー一番の問題作が出てくるとは思わないだろ

ネタバレします

 

 

大体「賛否両論」なんて言われる作品は殆ど”否”に偏っているような場合が多いけれど、今作は本当に賛否どちらも観測できるように思う。それにはやはり主人公の死という結末が関わっているのだろう。

テレビ本編から10年経って主人公を死なせるということがどれだけ凄まじいことか。平成ライダー20作品のうち、主人公の死によって完結した作品は他に存在していない(『龍騎』だって世界の再構築によって真司は復活したわけだし)。オーズを見ていない人にも分かりやすいように説明すれば、ルルーシュが生き返ったと思ったら今度はスザクが死にました、並みの衝撃がある。

個人的な感情を言えばこういった結末は全く好きではないし、凡庸なハッピーエンドで終わる方がまだ好みではある(火野映司というキャラクターにとってこれがバッドエンドかハッピーエンドかは一考の余地があるとしても)。

しかし、好きではないにしろ、火野映司も人間なので死ぬときは死ぬ。「女の子の命を救えなかった」という映司の印象的なオリジンに絡めた展開は良かった。映司というキャラクターは目の前の命を救うために使えるものは何でも使うというイメージがあり、それが本編ではオーズドライバーであり、『ジオウ』では議員バッジだった。そういった印象から言って、もし使えるものが自分の命しかなかったら、映司は躊躇なくそれを使うだろう。そういう点では納得感はある。

ただ、キャラクターとして「そういう結末になりそう」ということと、実際にそれを視聴者が納得できるかは別問題で、自分はその展開に突き放されるような印象を受けた。感覚としては、現実で身内が死んだ時の感覚に近い。『仮面ライダーゴースト』では「人間はいつ死ぬか分からない」を一年通してテーマとして掲げたが、実際それを地で行くのは寧ろ本作である。

なぜこの映画に突き放されたのか。思うに、本作には「映司の死」という結末を描くまでの動線、視聴者に対する丁寧なアプローチというものが殆ど欠落している。「いつかの明日に手が届く!」という希望に満ち満ちたキャッチコピーであったり、本編の展開にしても、映司が死ぬという結末を実際には全く予感させないのだ。劇中でアンクは「泉信吾が助かったのだから、映司もきっと助かるはずだ」と希望を口にする。比奈も映司は助かると信じている。視聴者はそれに呼応して、寧ろ映司の復活を予感する。

第一、上にも述べた通り、「主人公の死」は「仮面ライダー」というシリーズにとって考えにくい事象である。特に平成二期の作品群は明るい作風が特徴で、『鎧武』などの例外を除けば、怪人と化した一般人の死でさえ意図的に描くのを避けてきた歴史がある。その作風を知っているからこそ、いくら本編でメインキャラが死に瀕していようと、「実際に死ぬ」可能性を我々は排除してしまう。(『フォーゼ』や『ドライブ』で最強フォームを手にする為に主人公が一度死んだことを想起してほしい)

つまり、実際に視聴者を納得させる形で火野映司を殺すのであれば、「まさか死なないだろう」という暗黙の了解をはるかに押さえつける形での丁寧な積み上げが不可欠だったのではないか。ただしそれを行わなかったことが意図的か否かは自分には判断できない。あえて突き放すような死を描きたかったのであれば、少なくともその点では成功している。

更に言えば、映司が死んでからエンディングに入る構成もそのことに一役買っている。これは例えば『エヴァ』旧劇場版のラストシーン、アスカの台詞から急に〈終劇〉と表示されるのに似ている。視聴者はその衝撃を咀嚼したり、他の登場人物と分かち合う時間を持てない。例えば『スターウォーズ/フォースの覚醒』でのハン・ソロの死や、あるいは『アベンジャーズ/エンドゲーム』でのトニー・スタークの死は、劇中の人物がその死を悼むシーンを描いた。火野映司の死には、その時間がない。ただ明日のパンツがはためいているだけである。

もっとも、今作にそういった時間的余裕は無かった。約60分という時間は本作でやりたかったことに対して圧倒的に短かったように感じる。新キャラクター・ゴーダも魅力を感じさせるものだったが、「火野映司の欲望から生まれたグリード」として、もっと掘り下げることができたのではないかと思ってしまう。「なぜアンクが復活したのか?」「なぜ800年前の王が復活したか?」といった根幹に関わる疑問に対しても、十分な説明が用意されていたようには感じなかった。タジャドルエタニティの活躍は非常に魅力を持って描かれていた一方、バースXや復活したグリードたちは不完全燃焼の印象を受ける。要素を詰め込みすぎだったのではないかというのが率直な感想ではある。

総じて、仮面ライダーオーズという物語を着地させるのに、非常に難しい着地点を選んだのが『オーズ10th』という作品だった。しかしながら、とにかく尺が足りなかったために、我々はその全容を理解することが非常に困難になってしまった。本編に捧げられたオマージュや新フォームの活躍など、魅力ある場面は多くあっただけに、そのような不完全燃焼感が色濃く残ってしまう。願わくば、小説などの形で本作が補完されてほしいと思う。

 

P.S. フォーゼ10周年映画やれ!!!!!!!!

2021年 良かったもの

備忘録です

 

・『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』


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普段露出の少ないウルトラマンにも活躍の場ができるの、とても良いと思う。ウルトラ6兄弟VSスペクター兄弟のシーン、定期的に見てる

 

・『ヒトコブラクダ層ぜっと』

 

メソポタミアとか恐竜とか出てくるので

 

・『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト

【店舗限定特典付き】 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト [ blu-ray ] 店舗限定特典内容:オリジナルL版アクリルプレート / 封入特典内容:特製イラストカードセット(54枚入り) / 特典CD(九九組新曲を収録) / アニメ新規描き下ろし三方背BOX / 特典映像+BD用撮り下ろし映像

大場ななの二刀流がかっこよかったので

 

・『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

 

ユーミンのVoyagerと惑星大戦争のBGMが良かった

 

・『ゴジラS.P』


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ゴジラシンギュラポイント、略してゴンギュラポン」←これ大好き

エンディング映像が良すぎる

 

・『シャン・チー テン・リングスの伝説』

 

 

アクションがめちゃめちゃ格好いい

 

・『コントが始まる』

「コントが始まる」Blu-ray BOX

20代後半の男の関係性が好きな人向け 演技上手いので良い

 

・『フリー・ガイ』

 

前向きなメッセージ多めで良い作品 設定は勿論面白いんだがそこからのストーリーの広げ方も良かった

 

・『メトロイド ドレッド』

メトロイド ドレッド -Switch

難しいんだけど死んで覚えたらクリア出来る加減が絶妙だった

 

・『機界戦隊ゼンカイジャー』


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たこ焼き屋が爆発するシーンで爆笑してファンになりました 年明けからも続くので、見よう(ダイマ

 

・『アイの歌声を聴かせて』


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ミュージカルっていいよね 曲も良いし絵も綺麗なので気に入った

 

・『呪術廻戦』

呪術廻戦 Vol.1 Blu-ray (初回生産限定版)

アニメ版、最近見ました(流行周回遅れくん) 面白かった

 

・『ワールドフリッパー』

worldflipper.jp

メインストーリー第10章が遂に更新されました。みなさんもうワールドフリッパー第10章をプレイされましたでしょうか? 主人公アルクの過去に迫る壮大なストーリー、渋谷を舞台に繰り広げられる世界の命運を賭けた決戦、超能力者集団〈エイジス〉と〈星命会〉の手に汗握る攻防。魅力的な新キャラクターも多数登場するストーリーを今すぐ体験しよう。先日2周年を迎えたばかり、気鋭の人気タイトル『ワールドフリッパー』を皆さんどうぞ宜しく。

 

ネタバレ有シン・エヴァ雑語り

ネタバレするぞ 俺はやると言ったらやる

さて今作、一晩経って考えるにつれ、旧作の落とし物を丁寧に回収しようとする意思がひしひしと感じられ、シリーズ物としてかなり「ちゃんとしてる」なあという感想になってきた。単体の映画として見ても背景の美麗さだったり見所は多い映画ですから、総じて冗長な感じも受けず満足度は高かったように思う。

ところで新劇場版の内容は当然テレビ版及び旧劇場版のリメイク(実際には地続きの話であることが今作でほのめかされたわけだが)としてあるので、大雑把に旧作をなぞっているわけです。『:Q』はテレビ版とは相当異なった内容になっているにしろ、カヲルくんとの出会いとその死であったり、24話「最後のシ者」までの内容をなぞっていた。つまり『シン』は残る25・26話の内容を踏襲したものになることが当然予想されたわけです。まさに我々にとって三度目の正直と言うべき作品なわけです。

実際のところ今作は旧劇場版を思わせる演出・展開が多岐にわたって見られ、ではメッセージ・テーマ性というものがどうなったかということについてですが、正直に言えばシンのテーマも全く咀嚼しきれていないし旧劇のテーマも正直理解しているかどうか怪しいので何も言えません。お前やる気あんの?

真面目な話をしようとすると、「現実と虚構」というテーマは確実にあると思うし、「アニメ」という媒体自体が「虚構」の比喩として使われていることは確実っぽい。しかし巷でよく言われている「オタクはアニメを卒業して現実に帰れ」という見方には個人的に待ったをかけたくなるというか、お前それ浅くないか?と言いたいわけです。それはお前がオタク叩きをしたいのに作品を利用してはいまいかと。旧作は現実世界で打ちのめされたシンジが精神世界で救われる話だった。しかしシンは現実世界で立ち直ったシンジが精神世界で他の人たちを救う話になっている。ここの対比は明らかに意図的であると感じざるを得ません。虚構のアニメーションの世界を飛び出してリアルな世界に進んでいったことを肯定的に描いたエンディングにおいて、果たしてこれが虚構を否定的に捉えたものと解釈してよいものかどうか。

そこで考えたいのが初号機VS13号機の一連のシーン。このシーンはシリーズ中通して初めてシンジがゲンドウと直接対決する場面であり、またゲンドウと対話に及ぶというテレビ版・旧劇場版・漫画版・新劇場版通してずっと避けてきたことに初めて及んだ場面でもある。そういった点でも重要なシーンに違いないが、問題はここ以降の演出です。第三新東京市での戦闘が始まると視聴者はすぐに何かがおかしいことに気付く。CGの雰囲気が明らかにこれまでと異なるからです。そしてビルの挙動もおかしい。そして初号機が倒れ込み、背景の空が実はホリゾントであったことに気付く。ビルは全てミニチュアで、実は一連のシーンは特撮のセットで撮影されていたと分かるわけです。

そもそもパンフレットにも書いてあった通り、今作は実写映画的な技法が取り入れられていて、それは冒頭の8号機の戦闘シーンでも分かります。では精神世界の演出に「特撮のセット」というシチュエーションが採用されたのは、単に総監督庵野秀明ウルトラマン大好きな特撮オタクだからだろうか。ちょっとはそれもあると思うけど恐らくそれだけが理由ではない。思い返すに、旧劇場版ではアニメーションを虚構、実写映像を現実と見なす演出がなされていた。ここからは僕の想像になりますが、「特撮」はその中間と捉えられているのではないでしょうか。実写の映像だけど、現実には起こらないような映像を撮る。特撮の本質は見る者の視覚に嘘をつくことだと昔聞いたような聞かなかったような曖昧な記憶があります。虚構と現実の中間。そのメタファーとして特撮を使ったのであればこれほど説得力のある話は無い。

要するに現実と虚構は互いに影響し合うし、どっちかに完全に属せねばならないという性質のものでもないという話を含むと思うわけです。だからそれを「アニメなんざ卒業しろ」というメッセージとして受容するのはあまりに乱暴ではないか。

話が色々と逸れたような感じもするが、そういったメタフィクションっぽい話をさっ引けば今作の話って非常にシンプルで、「主人公が子供から大人になる話」という王道的な成長譚だと感じられた。ゲンドウも「大人になったな」つってるし。何なら実際大人になるし。碇シンジ(CV:神木隆之介)についてはもう何も言うことはないというか、ジブリ作品や『君の名は』、『サマーウォーズ』などを思い起こすにつれ、間違いなく日本のアニメ映画を牽引してきた声優は神木隆之介を差し置いて考えられない。「エヴァンゲリオン」というコンテンツを締めくくるのにまず間違いなく相応しい。また話が逸れました。

ゲンドウの一連の独白は非常に驚いたというか、中盤でのケンスケの台詞だったり予告編から「シンジが父と向かい合う」という展開は予想されたものの、実は「ゲンドウが息子と向かい合う」というシーンだったというどんでん返しが面白かった。僕は最近カイジのアニメ見てたんだけどそんなこと忘れるくらい引き込まれる独白だった。ゲンドウとシンジが本質的に似ていて、実はゲンドウの方もシンジから逃げていたんだという話は旧劇でも提示されていた部分。しかし今回はそれを直接シンジに吐露し、「すまなかったな、シンジ」と直接口にした。ちゃんと言えたじゃねえか……と思わず全身がグラディオスになる。

そう、「すまなかったなシンジ」もそうだが、今作は旧劇場版で取りこぼした部分、敢えて捨ててきた部分を拾いまくっている。結局のところ旧作ではシンジ以外の人物については描かれなかった。だから今度はシンジが彼らを救うという構造。二十数年前の映画を踏まえた展開なんてどうなんだと思うかもしれないが、これは四半世紀続いてきたコンテンツにのみ与えられる特権といったところで、こういう特権は行使せねば損だと僕は思っている。*1

そういう視点から言えば、精神世界の特撮スタジオから主要キャラたちが消える場面は彼らをその役から降ろすという意味であると見ることもできる。加持さんがカヲルに言った「渚は海と陸の中間、使徒と人間の狭間であるあなたにぴったり」みたいな台詞は印象深い。何が印象深いのかと言えば、本来「渚」は分解して「シ者」、すなわち使徒を意味する苗字だということはオタクの間では常識なわけです。それに今回別の意味が与えられた。たとえ後付けであっても、渚カヲルを「最後のシ者」から解放したわけです。カヲルくんは分かりやすい例だったが、そういったことがアスカやレイに対しても行われている。チルドレンはこうして大人になったという話。

そして旧作からのヒロインだったはずがQで急速にそのロールを減衰させ、ついにシンで子持ちであることが明かされ決定的にヒロイン力(ちから)を失ったミサトさん*2。しかしその代わりに「父親が全ての元凶」という決定的な主人公属性を手に入れ、エヴァの裏主人公という唯一無二の属性を欲しいままにするミサトさん。ていうかお前やってること完全にネモ船長じゃねーか!旧作でのミサトさんはシンジにとって保護者なのか年上のお姉さんなのかよく分からんキャラで(というかミサトさん本人もよく分かっておらず)、最終的に大人のキスぶちかまして初めて土俵に上がるという凄いヒロインだったわけですが、今回は逆に「親」としての葛城ミサトを強調してきた。多分そこが葛城ミサトというキャラにとっての救済だったのかもしれないしそうじゃないかもしれない。

そして最後に残されたシンジを迎えに来るのがマリという構図。「マリとは何のためのキャラクターなのか?」という話は常々考えられてきたことです。マリは他のチルドレンと違って旧作からの続投キャラではない。だからシンジに救われる必要はない。だからこそシンジを迎えに来ることができるという複雑そうで単純な話。というかお前も京都大学冬月研究室所属・綾波ユイ大好きクラブ会員ナンバー3だったんかい!

ところでマリって初登場からシンジの「匂い」について言及するじゃないですか。今回二度に渡ってそれが補強されていて、それって恐らく「匂い」は映画から知覚できない現実にしか存在しない部分だからじゃないかと。まあ4DXは匂いもするんですけど、そんなことはさておき、マリは現実にしか無い匂いを知覚することができる存在として描かれている。つまりマリは現実サイドからの使者だったんだよ!みたいな結論は早計だと思うので封印します。皆さんで考えてください(は?)

他にも言うべきことは色々あると思うんですが今回は初見時の感想を思ったまま残しておきたかっただけなのでこの辺でやめておきます。松任谷由実最高!宇多田ヒカル最高!鷺巣詩郎最高!惑星大戦争は観たことないので今度観ます。

*1:同じ理由で僕はジオウOQも好きだったりする

*2:子持ちの人妻って興奮するよねみたいな話はややこしくなるのでやめてください